上田禎子 第一句集『二藍』
自選十句 少年を見舞ふ車座赤のまま パラソルをさしてモネの絵の風の中 新しき箸を揃へぬ星の妻 藁塚や只見川にかかる橋いくつ きさらぎの風の街道獅子座まで 水温む葉刷子立ての亡夫のもの 月を待つ清貧家族膝揃へ 業平忌レモンの色の指輪買ふ ミントの葉折りて秋の日遊ぶかな 賀茂祭馬をなだめて発ちにけり 取り合わされた二つの物(事)の間に立つエーテル状のものに心を打たれる。例えば「業平忌」の一句。その業平忌と、「レモンの色の指輪買ふ」のフレーズは、本来まったく関係のないことだが、作者にはそれが適うと思える。これも私が日頃から言う「心の色」なのである。その心の色こそが先に書いた「個の発現」ということになる。榎本好宏「序に代えて」より 目次より 旅の夜を線香花火で閉ぢにけり あをあをと硝子の空を帰燕かな 紅葉狩り吾に棲みつく天邪鬼 夜の秋蝶々魚はしあはせか 雪催タイ料理でも食べに行こ 角川書店 2007年刊
by owl1023
| 2007-11-16 14:01
| 上田禎子著書
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