歌仙集「鼎」

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歌仙 鼎集

1990年発行










目次

夢の跡‥‥‥‥‥‥‥ 玲子・喜代子 
さみだれ‥‥‥‥‥‥ 玲子・喜代子
秋の島‥‥‥‥‥‥‥ 玲子・喜代子
美しき‥‥‥‥‥‥‥ 玲子・喜代子
常の景‥‥‥‥‥‥‥ 玲子・喜代子・まさる
風薫る‥‥‥‥‥‥‥ 秋元正江 捌き        
鶏頭‥‥‥‥‥‥‥‥森・喜代子・まさる
冬の日‥‥‥‥‥‥‥杉内徒司 捌き
養花天‥‥‥‥‥‥‥玲子・喜代子・まさる
梅雨明け‥‥‥‥‥‥草間時彦 捌き
天壇‥‥‥‥‥‥‥‥鈴木香歩(幸夫)捌き
啄木忌‥‥‥‥‥‥‥東明雅 捌き
古暦‥‥‥‥‥‥‥‥宇咲冬男 捌き
行春‥‥‥‥‥‥‥‥玲子・喜代子・和世
薄紅梅‥‥‥‥‥‥‥中島啓世 捌き
秋高し‥‥‥‥‥‥‥東明雅 捌き

序文 「鼎の会」について   東明雅
俳誌「貂」同人森玲子・「鹿火屋」同人岩淵喜代子・そして磯辺まさるのお三方ではじめられた連句「鼎の会」は、連句界の中でも独自の存在である。もともと「貂」には六十一年かの暮に逝去された早稲田大学名誉教授鈴木幸夫先生の連句の会「鈴」の流れがあって、森さんははやくから、その薫陶を受けておられたのである。鈴木先生とは私も風交があってたが、その作品のおおらかかな中に新しい詩情をたたえた、そして一種とぼけた飄逸な味は、非常に魅力的で多くのフアンが存在した。
 だから、それを襲いだ「鼎の会」の作品には、鈴木先生の余風が残っている。

     待ちくたびれし改札のそば        まさる
  昼の月ねむりつきたる嬰の重く        正江
     水硬くなる鮭の来るころ          喜代子
  秋声を聴く心地して長湯する          る
     丹念にひく口紅の色            玲
  鴉より黒き想ひの恋ありと           喜
                    (歌仙 「風薫る」)


  大干潟人も鳥居も脚出して          玲子
     つひ買いすぎしお土産の数       喜代子
  じつくりと余り野菜を煮込みゐる        和世
     地震も知らずに寝たきりの姑      玲
  磐石の平を襲ふ朝の霜             喜
     犬をつれゐる寒き公園          和
  海底を息つづくまで歩こうよ          和
                   (歌仙 「行春」 )

 これらは、単に付味・転じがよく、珠が見事にころんでいるというだけではなく、現代詩的なセンスがあり、新しい感覚が光っている。
 「鼎の会」はまだ十数巻しか作品がない。私の師匠、根津芦丈先生は「連句は十巻まいて一稽古、百巻まいてほぼ明るみに出る」と申しておられた。それによれば「鼎の会」は、ようやく一稽古済んだだけであろうが、既にはっきりとその特色をもっておられることは大したことである。こうして五十巻、百巻とまいて行かれるうちに、やがて明るみに出て、鈴木先生の作品に見られるような、とぼけた味(俳味、俳諧味)も加わって来るだろう。私はその日を期待しているのである。         (平成元年朧月、猫蓑庵において記す)
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by owl1023 | 2007-07-01 23:56 | 岩淵喜代子著書


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