句集

平林恵子第一句集 『秋冷の竹』   

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帯文  塩田丸男
 平林恵子さんの俳句は、ひと口でいうと「一念の俳句」である。つらぬき通す美しさを持っている。これは最近の日本人にもっとも欠けているものではないだろうか。多分、お人柄によるものだろう。一句一句の良し悪しよりも句集一巻を読みおわったあとの感興がよかった。心に沁みた。これからもぜひ、一念をつらぬき通してください。








跋 背筋の見える人  岩淵喜代子
 平林恵子さんのことに触れるには、わたしの俳句入門の時期あたりから語らなければならない。
 それは、一九七五年頃だった。「鹿火屋」という文字の読み方にさえ戸惑っていた頃である。
 その「鹿火屋」誌の巻頭近くにいつも輝いていた一人に、平林恵子さんがいた。
 ほかに私が覚えているのは、中山一路さん、長谷川貴枝さん、永島理江子さん、椎橋清翠さん、美馬和代さん直江るみ子さん、川村和子さん等、そのすぐ後で浮上してきたのが、小室義弘さん、北沢瑞史さん等であった。鹿火屋の外側の人たちでも、この名前を知っていると頷く人は多い筈だ。 
 だが、いつこれらの人たちが消えたのか、その消え際は見ていないまま、気がつけばそれらの半数以上の名が、その数年後に消えていた。消えていたというのは、浮上した新人に座を奪われたのではない。誌上から消えていったのである。
 現在、鹿火屋誌上に名前を残しているのは、中山一路さんだけである。
 その先輩たちの流麗な俳句に、私も感化されて育ったと思っている。
 これらの仲間の中でも平林さんの句風は、理知的で硬質で、鮮明な輪郭を持っていた。

  雨意のおく再びまみゆ吉野藤
  祝ごとの母の姉妹や切山椒
  焚く中の松の匂ひに冴え返る
  音読の背なに重ねし青網戸

 
 ひたすら、鹿火屋の伝統を継承していた原コウ子に育てられたこの作家の緻密な表現は見事である。

  秋冷の竹を眺むるあとずさり

 この句が、まだ主宰になって間のな原裕先生の鑑賞で提示されたときの印象は忘れられない。
 ただただ真っ青な竹林の前に立つ作者の、俳句への厳しい姿勢を見たような気がした。
 私は、平林さんと同じ歳である。それが、お互いの親近感となって、何度も旅を重ねている。これからも、いろいろ旅に同行させていただきたいと思っている。

  二〇〇四年 盛夏                                  

2005年  文学の森社刊
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by owl1023 | 2007-07-06 17:40 | 平林恵子著書


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